ソシャログ

社会の本質にゆるく迫ります。


大江戸B級文化ミュージアムという起業案を少しブラシュアップ

0.プロローグ(もったいない!)

東京の繁華街を歩いていると、交通機関の複雑さに戸惑ったり、買い物や食事の混雑に疲れている外国人観光客をよく見かけます。初めての短期訪日日程の中で東京だけを訪れる人は日本を再び訪れたいと思っているでしょうか。さらに東京をはじめとする大都市以外の魅力的な地域を彼らはどれだけ知っているのでしょうか。もしかしたら日本の大都市に疲れるだけで、日本特有の体験もせずに帰ってしまうのではないでしょうか。

日々の慣習として人間や街を観察し、日本各地をローカル列車で旅をしたことがある私(首都圏民)にとってこのような光景は危機感として切実に響いてきます。危機感というのは、日本への訪日外国人観光客は増加傾向であるものの、実際には満足度が低かったりリピーターにつながっていないのではないかということです。

はるばる日本を訪れるのなら、日本をもっと知って、日本をもっと体験しないと「もったいない!」と思いますし、日本観光への満足度も上がらないと思う。日本の地方部に住んでいる方としても、観光地は東京や京都といった有名どころに偏るばかりで,、自分の地域はいまいち知られていないと不満に思っている人も多いでしょう。

短期日程の訪日外国人観光客は大都市以外をまわる余裕がないのかもしれませんが、これを改善し、日本の地方創生や観光促進につなげる営利事業がここにあります。

1.A級文化とB級文化

さて、筆者は社会科学系の物書きであると同時に歴史と文化財が好きでおもに首都圏の博物館や美術館をいくつも訪れてきました。こうした施設で来場者は、教科書にも掲載されている絵画や、ガラス越しに有名人の高尚な作品を静かに眺めるものです。このように、大和絵、宗教画、出土品、刀剣など来場者にとって一方的に見る対象に止まりやすい時代のエリートによる作品群をここでは「A級文化」と呼ぶことにします。

私の考えでは日本はA級文化とは対照的な性質があるB級文化(≒庶民文化)も充実しています。具体的には、将棋、折り紙、盆栽、箱庭、錦鯉、紙切り、けん玉、飴細工などがあてはまります。ここでは誰もが簡単に文化の担い手になれ、将棋の対局、折り紙の教示、鯉の継承といった形で人と人との間に交流が生まれるという長所があります。

またB級文化はA級文化ほど理解が難しくなく、初心者でも見た目一発の面白さだけで楽しめます。つまり、今後も流行が続くと思われる「インスタ映え」がB級文化には期待できるのです。

 

2.B級文化の総合施設の意義

ところが現在、B級文化の施設は将棋会館(千駄ヶ谷)や盆栽美術館(大宮市、江戸川区)といった形で日本各地に個別に点在しているため、短期日程の訪日外国人観光客が訪れるのは不便です。

さらに既存の施設は初心者には難しかったり、切り絵やけん玉などの実演は常設形式で見れなかったりするため、それらを踏まえた総合施設が必要です。A級文化には国立博物館という総合施設があるのならB級文化にも総合施設があってもよい、というのが私の意見です。

3.地方への拡散効果

そのような施設があれば、仮に盆栽だけを目的に来たとしても、将棋やけん玉といった他の文化に出会い、その魅力に目覚めるかもしれません。あるいは錦鯉に興味を抱いた人は、その後、鯉の名所や各地の養鯉場に足を運ぶといったことも増えるでしょう。本ミュージアムには地方に対する拡散効果があるのです。つまり、B級文化の総合施設の運営場所は訪日外国人観光客が最初に訪れる率の高い大都市である東京がふさわしいといえます。

4.本事業の概要

本事業は日本の様々なB級文化を一つの施設に集めて展示して、その道の玄人による実演を見てもらうとともに、来場者に体験してもらう総合施設を設置・運営するものです。それに際して体験教室や関連商品の販売なども行います。

参考:本企画における具体的な収益源

  • 入場料
  • 入場料とは別枠での特別体験料(たとえば和服を着て将棋指しロボットと対決、そして写真撮影)
  • スポンサー料(観光業中心に獲得をめざします)
  • 関連商品の販売
  • 大会の様子を放映することによる収入
  • 教室開講や大会開催に際しての施設使用料
  • 飲食店や盆栽店の出店料
  • 公的助成
  • クラウドファンディング

 

5.体験経済の効果

次に社会情勢から見た本ミュージアムの必要性です。以前、「爆買い」という言葉が流行したように訪日外国人観光客の旺盛な消費が話題になりましたが、最近では外国人観光客の消費トレンドは体験へとシフトしています。このような状況では訪日外国人観光客に「日本」を効率よく印象づけ、東京地区だけに止まらない日本各地のリピーターになってもらうことが重要です。

この点、B級文化は玄人の実演を見てそれを自ら行うことが肝になるので、その総合施設の運営は効果的です。たとえば諸国の要人が本ミュージアムを訪れれば、日本への好感度が上がったり、その魅力的な空間の創造に携わった事業者に対する興味が湧くなど本ミュージアムは外交レベルでも役立つはずです。

外国人はせっかく日本を訪れたのだったら、畳敷きの部屋で和服を着て将棋を体験したり折り紙を通じて日本人と交流して、日本文化を何か一つ内面化して欲しいというのが筆者の願いです。

6.日本文化の再発見

もちろん、訪日外国人だけでなく日本人としても日本文化の再発見になります。とくに社会が成熟しつつある現代の日本では、お金や余暇を文化的な体験に投じる習慣がもっと広まってもよいでしょう。

また日本人は、自分の業務関連あるいは外国人の方から話しかけられなければ自分から外国人と交流しづらいと考えている人が多そうですが、B級文化を介した交流ならそういった垣根は低くなるでしょう。

多くの未成年者や美術・工芸に興味のない方にとっても、A級文化の展示施設は難しかったり退屈だったりしますが、B級文化は小難しい要素が少ないため、本ミュージアムの開設は文教面でも有用です。

このように体験型文化を通じてインバウンド需要と日本人の性質を結びつけたところに本案の特徴があります。アートは異なる層の人間を結びつけることができるのです。めざすは小中学生も積極的に訪れて外国人と融和的に文化交流をしている姿です。

 

7.ハイテク文化との融合

日本は伝統文化とハイテクが同居している国です。そこで将棋の体験においては将棋指しロボットと実際に対局できるだとか、折り紙コーナーにおいては金属製の折り網を使った作品を展示する、といったことも考えています。B級文化はハイテクとの相性が意外によいのです。こういったハイテク企業は本ミュージアムのスポンサー候補としても有力です。

8.行事の体験

本ミュージアムは運営面の具体的な工夫として、春は桃の節句や端午の節句、夏は線香花火を通じた夕涼み会、秋は月見、冬は餅つきや節分といった日本の四季を感じていただけるような体験型行事を催します。

いわゆる「ナイトタイムエコノミー」が重要視されつつある昨今においては、真夏の夜のミュージアムというのも味わいがあるのではないでしょうか。

こうした行事とB級文化を季節感とともに総合的に売り込んでいる施設は存在しないので、その独占的地位からいって利用者とスポンサーは絶えず一定数見込めるでしょう。とくに時間に余裕のない短期ツアー客や学校遠足の需要は高確率で取り込めると考えています。

 

9.「いつかはあなたも展示の主役」(B級文化のプラットホーム・双方向型ミュージアム)

また気は早いですが、本ミュージアムには「いつかはあなたも展示の主役」というキャッチコピーを考案しました。これは、インターネットやコンテストを通じて来場者が優れた作品を本ミュージアムに提供すれば、来場者は展示主体になれるということを意味します。とくにSNS界隈で話題になった作品の展示には力を入れたいです。本ミュージアムの来場者は鑑賞にとどまらず他者と交流したり展示の主役になったりするという点で本ミュージアムは双方向型のミュージアムだといえます。

一般に日本の伝統的な展覧会や美術館の作品選定では作者のコネクションや作品の権威が優先されがちですが、本ミュージアムは無名の一般人による作品であっても作品の出来さえよければ積極的に展示します。グローバル化が進んでいる現代にあっては、作品選定が開放的なミュージアムがあってもよいからです。

本事業にいうB級とは「A級とは異なり自らが担い手となる文化」という程度の意味であって、B級文化の作品でも出来が一流であれば立派な展示物です。それは食材・食品サンプルや粘土といったありふれた材料の作品でも構いません。以上のような形で展示物を集められれば展示物の購入費用が抑えられるうえ、その保存もA級文化ほどの繊細さを要求されません。

10.日本人の遊び心を広く生かす

一般に日本人は真面目とかいわれますが、江戸時代から風変りな絵を描く人が一部におり、現代でもマンガ、アニメ、ゲームは世界でもトップクラスの魅力があります。さらにSNSや掲示板ではユーモアに富んだ投稿もあるように、日本人は意外と遊び心に長けている面もあります。

いわゆる現代アートは、制作者本人や専門家界隈が陶酔しているだけで大衆的な人気を博せない作品も散見されます。また、すでに現代アートの美術館は存在するので、それと重複しないようにするためにも本ミュージアムは大衆的な理解が広く得られ、多くの来館者が実際に体験したくなるような美術品を収集していきます。

さらに、地元の高齢者を館内スタッフとして雇って自慢のけん玉技を披露いただいたり、若者が期間限定の食べ物アートを提供するのもよいでしょう。一般企業ではけん玉や将棋のスキルは評価されにくいですが、本施設では立派なスキルなのです。

また地方に対する拡散効果の逆パターンとして各地の関係者、たとえば天童市の将棋駒職人を本ミュージアムに呼んで、将棋駒をつくっている姿を見せるのも面白いかと思います。

11.再帰性と循環性のあるミュージアムへ

本ミュージアムを訪れた時点では折り紙をまったく知らなかった訪日外国人観光客が、母国で腕を上げてから自身の作品を披露したりその生の評価を知りたいがために本ミュージアムを再び訪れることも十分考えられます。本ミュージアムは初心者向けの施設かと思いきや、腕を磨いて上級者になれば今度は教える主体や実演する主体にもなれるのです。

このように文化はネット上や自国圏だけで完結させずリアルのミュージアムで多くの人に見てらうことによって、そのミュージアムが立地している駅・街とともに循環的に活きてきます。ネット上(とくにSNS)で話題になったアートや期間限定アートの展示という形態は現代人の嗜好や行動様式に適合しているうえ、ミュージアムに新鮮さを常にもたらします。

こういった体験型ミュージアムの来場者は1日あたり数百人程度が限界かもしれません。しかし、SNSやYoutubeと連動させれば影響が及ぶ人数はその数百倍にもなります。とくにスポンサー企業は自社商品を特定層に体験させたがっているので、体験型ミュージアムである本ミュージアムはスポンサー制度との相性がよく広告価値の増大が見込めます。

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