ソシャログ

社会の本質にゆるく迫ります。


なぜ振り込め詐欺はなくならないのか

振り込め詐欺が明るみになってから10年以上は経っています。その報道や防止キャンペーンも各所でたびたび行われているにもかかわらず、なぜ振り込め詐欺はなくらないのでしょうか。その原因、とくに日本社会に特有の事情を探ってみます。

1.権威や肩書に弱い

昨今の振り込め詐欺で詐欺師は、大手金融機関、弁護士、役所、警察官といった日本社会では比較的権威がある職業や所属組織を名乗りやすいとされます。筆者は彼らの権威は全盛期よりも下がっていると考えていますが、それでも高齢者を中心に一定の権威は保っているため、口頭でちょっと名乗られただけでも信用してしまう人がいるのでしょう。

また仮に本物の弁護士や警察官だとしても優れた人もいればそうではない人もいますから、単に口頭で弁護士や警察官を名乗ったところで信用できません。

 

2.身内がお金に困ると何度か温情をかけるのが当たり前

日本人は身内がお金に困ると数回は助ける傾向があります。身近なところでいうと、子どもが結婚して家を買うときに頭金を援助する場合が挙げられます。企業レベルで見ても、系列会社が不祥事や業績不振などによって窮地に立たされると、そのグループ企業が助ける展開がよく見受けられます。

それと同じように、夫や子どもを名乗る者から「事故を起こしてお金が必要になった」「会社に損失を与えてしまってお金が必要になった」などと声をかけられると、「身内である私が助けなくちゃ」と思ってしまうのでしょう。

この点、自己責任が強い社会では、たとえば自分の子どもがやらかしたことでも、子どもがある程度の年齢に達すれば、子ども自身が責任をとるといわれています。

3.詐欺師はターゲットに正常な判断をさせない

振り込め詐欺の被害者は自分が引っかかるとは思っていなかったと話すそうです。つまり、報道やポスターで啓発されていても、実際に詐欺師に話を吹き込まれると正常な判断ができなくなってしまうのです。

とくに振り込め詐欺の多くは「〇時までに入金してもらわないと困る」などといって対象者を慌てさせます。こういうときは正常な判断をしにくくなります。できる限り頼れる第三者や警察に相談して冷静さを取り戻しましょう。

4.羞恥心の作用

振り込め詐欺は今も年間数百億円の被害額を出しています。しかし、これは被害届に基づくものであって実際の総額はもっと多いといわれています。

なぜなら、詐欺に遭ったというのは日本社会では「情けない」「恥」と見られる傾向があるからです。こういった社会規範の下では被害届はもちろん、身内にも話せなくなりますし、全体の危機感や対策も弱まってしまいます。

また、たとえば「会社に損害を与え関係者に多大な迷惑をかけたからお金をすぐに支払え。そうすればクビは免れる」と脅されたら、解雇や他者への迷惑行為は日本の世間体では痛苦な現象・恥と見なされやすいだけに、お金の支払いはすぐに必要だと考えてしまうのかもしれません。

5.手元や預金口座にある程度の現金がある

アメリカ人のように株式投資を積極的に行っていると、手元に置いてある預金・現金は少なく、資産の大半がすぐに現金化できない株式にまわっていることも珍しくありません。これでは振り込むお金がありません。一方、日本人は高齢者を中心に預金・タンス預金を好む傾向があり、すぐにお金を振り込むことができる体制が整っています。

6.日本社会は相対的に平和

日本は諸外国に比べると、まだ平和な国です。これは女性が夜道を一人で歩けることや犯罪統計などを見ても明らかです。このように「いい人」が圧倒的に多いと、いざ「悪い人」に出会ったときに正常な判断を下せなくなるのかもしれません。

 

7.手口の巧妙化

最近では詐欺の手口も進歩しているようです。その典型が多くの人間が出演する劇場型と呼ばれるパターンです。訓練された複数の人間が役割を分担してお金の支払いを煽るそうです。

もし警察から疑わしい電話があったら、リダイヤルや指定された電話番号でかけ直すのではなく、警察署の固定電話の番号を調べてそこに直接かければ真偽がわかるでしょう。

詐欺師は「前の番号は変わった」「これから会議なので電話しないで」などと言って、本人に確認されないようにしてきますので、本人や公的機関に正式な直接ルートで確認する必要があるのです。

電話では声が似ていたり本人の話題に詳しくても、あまりあてになりません。このとき、もし声が普段と違っていても、犯人は「風邪をひいている」「気が動転して泣いているから」などといってウソをついている可能性があります。それに犯人は事前調査で対象者についてある程度のことは知っている可能性があります。

また、詐欺師は電話だけだと怪しいうえ、すぐに現金を受け取ることができないので直接会うと約束します。実際には会う寸前に「急用ができた」などといって代理人が受け取りに来るわけですが、それまでに直接会う約束をしていると代理人を疑わない場合もあります。

最近では犯行グループは事前に公務員を装って個人情報を得たり、過去に訪問販売や悪徳商売にあった人を「騙しやすい人間」として名簿にして詐欺の成功率を上げるそうです。

8.犯行グループは高齢者から資産を奪うことに抵抗がない

日本人の金融資産は高齢者に偏っていることが統計上わかっています。だからといって犯罪が肯定されるわけでは決してありませんが、一部の若者や悪徳業者は高齢者から資産を奪うことに抵抗感をもっていないため、犯行が繰り返されるのかもしれません。

まとめ.日本社会と振り込め詐欺

こうして見ると、振り込め詐欺は日本人の性質に沿った犯行であることがよくわかります。そこにはよくも悪くも日本人らしさが表れています。ですから、振り込め詐欺が大幅に少なくなったら、日本人・日本社会が大きく変わったといえるかもしれません。

なお現在では振り込め詐欺救済法という法律があって、状況次第では被害金額を取り戻すことができます。

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